みなさん、こんにちは。
私は、今日オーストラリアから帰国したばかりです。実は、19日に、国会の本会議 で首班指名してから、すぐオーストラリアに行っていました。いやー、日本は寒く なっていますね。これから夏を迎える南半球から戻ると、特にそう感じます。東北以 北では、雪や風が激しいとのこと。どうか、その地域にお住まいのみなさん、くれぐれもお気をつけください。
今回の豪州訪問の目的は、豪州とタイ両国政府の外務省が共催して5年前から開いて いる国際フォーラムへの参加でした。ブリスベーンから車で北に1時間半ほど走らせ たクーラム(Coolum)という場所にあるホテルが会場でした。
このフォーラムの目的は、毎年定められたテーマについて豪州・タイ両国だけでな く、アジア太平洋地域の若手政治家、官僚、学者等を集めて、インフォーマルな雰囲 気の中で忌憚なく議論を交わすことです。今回のフォーラムには、日本から私と自民 党の塩崎衆議院議員が参加する予定でしたが、塩崎氏がドタキャンしたため、結果的 に私だけが参加することになりました。
使用言語は英語のみ。アジア各国から、(私はともかく)かなり質の高い有識者や政治家が参加してきており、2日間にわたる討議で大変に勉強になりました。ちなみ に、今年の会議の主題は、国境を越えた犯罪にどう対処するか、というものであり、 具体的にはテロリズムや麻薬取引などへの対策について意見を交換しました。
久しぶりにゆっくり時間をかけての国際交流だったわけですが、いくつか感想を記し たいと思います。
まず、私が感動したのは、タイのスラキアット外相と豪州のダウナー外相のお二人が 議論に参加し、他の参加者と対等な立場で意見交換をしていたことです。特にダウナー外相には、深い感銘をうけました。ホスト国ということもありますが、ダウナー 外相は、3日間の日程すべてに参加(スラキアット外相は1日のみ)し、アジア各国 から集った参加者と非常に親しく懇談しておりました。外相になって8年目のダウナー氏は、当然悠然たる風格をもっていますが、それでいて尊大ぶるところは全くな く、非常に気さくで親しみのもてる人物でした。かくいう私も、2回の夕食を同じ テーブルで過ごしたので、多岐にわたる話題について外相と話し合うことができまし た。日本の外相はおくとして、なかなか1国の外務大臣とここまで深く話ができる機会はありませんから、私にとっては非常に貴重な体験となりました。
次に感動したのは、やはり他のアジア諸国からの参加者の実力です。中国、ラオス、 タイ、韓国、ブルネイ、シンガポール、香港、フィリピン、東ティモール等の各国か ら来た政治家や学者等の参加者は、皆英語を駆使し、時にユーモアを交えながら自説 を展開していました。フォーラムの最中、私も各セッション毎に必ず一度は発言して いましたが、とにかく発言したい人が多い会議(日本では稀?)で、司会をやってい るオーストラリア国立大学教授が困るほどでした。
私も彼らと昼食・夕食時などにも懇談しましたが、その知識といい、センスといい、 まさに一流といえるもので、彼らと人脈を築くことができたことは、将来非常に有益 だと率直に思いました。日本の指導者も、やはり定期的にこういう場所に出てきて、 肌で直接この「空気」を感じないと、時流を見誤るのではないか、と感じています。
アジア諸国は、非常に高い向上心と希望をもって、努力を重ねています。人々も、前 向きで元気なんです。「日本はまだまだ先進国だ」。これも事実なんですが、変な慢心を起こして対外的には威勢を張って、国内では実のところ物事がうまく進まない、 なんてことが続くと、日本は坂を転げ落ちるように転落してしまうのではないか、とさえ思います。日本企業はもっと国際競争力をつけるべきだ、という主張を最近よく 耳にしますが、その前にひとり一人が人間として国際競争力をつけていかないと駄目 なのではないでしょうか。
競争力をつける近道は、実際に「競争する」ことでしょう。そういう意味で私はこれ からも他国の政治家と切磋琢磨する機会を持ち続けていきたいと思います。
私がオーストラリアに滞在している間にも、テロリズムの拡散が起こっていました。 トルコでは、英国総領事が爆弾テロで亡くなる事態が生じました。また、イラクでも 連日何らかのテロ攻撃が起こっています。
テロ対処ほど、政治的にも軍事的にも難しいものはない、と私は考えています。テロ リストの目的は、その攻撃によって人々の心理に耐えがたい恐怖感(テラー)を与 え、それを利用して何らかの政治目標を達成しようとすることと言われています。ま た、その攻撃の特徴は、攻撃主体が判然としない匿名性にあり、かつ最近は、実行犯 がほとんどのケースで自爆するという手法を多用しています。
政治的にはテロ攻撃に屈してしまうと、テロリストの目的達成に手を貸すことになる のでできないということになるのですが、その一方でテロ攻撃の犠牲者の増大を阻止 しなければならないというジレンマがあります。
テロ攻撃を阻止するには、相手が対話や交渉に応じない場合(現在のイラクがこれに 当てはまります)、軍事的な防衛策を考えざるを得ないわけですが、テロ攻撃の手法 が自爆形態を取り、かつ民間人の巻き添えをいとわない(あるいはそれを戦術的に利用している)場合、伝統的な対処方法では、効果をあげることができないという大問題があります。いかなる軍事戦略・戦術も、その大前提は、「軍人といえども、人は自らの生命を惜しむ」ということであり、基本戦略は「味方の犠牲を最小限におさえながら、作戦目的を達成する」というものなのです。ところが、最近のテロ攻撃の場 合、この大前提が全く崩れているため、世界最強といわれる米軍でさえ、その事前防 止で思うような成果を挙げることができない状況なのです。
このような困難な情勢下ではありますが、私は国際社会はイラク支援を続行していかざるをえないとの立場であり、日本も憲法や他の関連法が許容する範囲内で最大限貢 献していくべきだと思っています。その理由は、まずテロ攻撃のような「人の生命を 何とも思わない」行為が長続きするとは思えないということがあります。次に、テロ リストの暗躍に屈し、イラクを見捨てることは、現実的には何の解決にもならないと いう点があります。
無論、米国政府の対イラク政策は、完全に正しいとは限りませんし、米国内ですら米軍の行動への強い批判は存在します。しかし、問題はただ米軍を批判し孤立させ撤退 に追い込むことが、イラクや中東をめぐる根本問題を解決することにつながるかどう かということであり、私はいままでこの点についての明快な議論を批判者サイドから聞いたことがありません。
日本では自衛隊派遣に焦点があてられています。これは、もちろん慎重に考えるべき 問題です。前述したように、日本の貢献は法的制約の中で最大限やるしかないわけ で、「非戦闘地域」での「人道復興支援活動目的」以外で自衛隊は派遣できないので すから、焦点は現状がそこに合致するか否かの専門的判断にあると私は思っていま す。
ただ、繰り返すようですが、イラク支援は続行すべきで、日本はできることは最大限やるべきなのです。私は今年1度イラクへ行っていますが、状況が許せば再訪して、現地の情勢をこの目で確かめたいと思っています。