みなさん、こんにちは。まだ米国です。今は現地時間で9月17日金曜日午前5時40分。今日が今回の議員交流プログラムの最終日になります。「時差ボケ」は完治していませんが、日本にいる時に比べると早く就寝していますので、元気です。マシンガントークin Englishもだいぶエンジンがかかってきました。
<アーリントン国立墓地を見学>
最初の米国報告を配信してから、中身の濃い日々だったので、書きたいことは山ほどあるのですが、まずは、昨日訪れたDC郊外の有名なアーリントン国立墓地の話から。この墓地は主に米軍関係者とその家族が埋葬されている墓地で、案内してくれた通訳の方の話では、約30万人ほどの人が埋葬されているとのことです。本当は、プログラムに入っていませんでいしたが、私が強く主張して昼食時間に行きました。(結局他の参加議員もほとんど来てくれました。)
この墓地がなぜ有名か、そして私がなぜ昼食時間をカットしてまで行きたかったか、というと、この墓地は宗教的に完全に中立な墓地であり、また中央には「無名戦士の墓」があり、そこには日本の首相を含めて世界の多くの国家元首が追悼に訪れている場所だからです。そして、その特徴ゆえに、日本における靖国神社問題と国立追悼施設の建設問題をめぐる議論に何度も登場してきています。
以前にも書いていますが、私は小泉首相の靖国「公的」参拝にはきわめて批判的です。総理といえども信教の自由はありますから、ひとりの人間としての信仰次元の話に立ち入るつもりはありませんが、小泉総理の場合、参拝時に「内閣総理大臣」という肩書きを記帳しております。総理というのは、政治学の常識では一面では人間でありますが、もう一面では全国民を代表する国家機関という性格をもっています。
オフィシャルな肩書きを書くということは、後者の意味で、自動的に日本の全国民を代表してしまいます。靖国神社は、神道の一宗教法人にすぎませんが、そこに総理が行って(本人がどう思っているのであれ)全国民を代表するような形で参拝してしまうと、国民の中には仏教徒もキリスト教徒もイスラム教徒もいるわけですから、これは大きな問題になるわけです。これに加え、中国などアジア諸国は、靖国神社にA級戦犯が合祀されている点に着目して、総理の公式参拝には強く反発しています。
A級戦犯合祀問題については、「分祀をすればいい」という意見もあるようですが、私はそれは宗教法人内部の問題であり、政治権力が介入するのは適当でないという立場です。ただ、総理の公式参拝は、憲法で保障された国民の信教の自由原則との兼ね合いから行っても問題であり、しかもこれは政治側で是正することができます。
小泉総理にはまず公式参拝をやめていただきたいと思います。しかし、その上で、「それでは日本で戦没者を追悼するには、どこへ行けばいいのか」という問いかけに答えなくてはならず、そこで公明党も従来から無宗教(=宗教的に中立な)国立追悼施設を建設すべきと主張してきています。そのモデルのひとつがアーリントン国立墓地になるわけです。
実際にアーリントン国立墓地に行き、やはりすばらしいと思いました。あざやかな緑があふれる広大な大地に白い墓石が何万と並んでいて、静かで荘厳な雰囲気が漂っていました。米国ですから、多くの人がキリスト教徒だったと思いますし、墓石に十字架が刻まれているものも散見されました。しかし、中央の無名戦士の墓の周辺にも特定の宗教性のある建物等はなく、世界のどんな国から来ても訪れて追悼できることがよく理解できました。(私も無名戦士の墓の前で手を合わせました。)
ただ、一方でこのような広大な土地を国立墓地として日本(特に東京)で確保するのは不可能だということもよく理解できました。日本では墓地という形ではなく、追悼に主眼をおいた施設にせざるをえないな、と痛感しました。今回の視察を生かして、また国会での議論を深めたいと思います。
<北朝鮮問題>
2日目から昨日まで実に多くの米国政府・議会関係者と北朝鮮問題について意見交換しました。米政府の基本方針は、北朝鮮当局は交渉において相手を欺く傾向が強いが、しかし国際社会で孤立させるのが最も危険であるという立場から、「関与政策(engagement policy)」と取るというものです。私たちもおおむねその立場を支持し、今後も6カ国協議の枠組みを中心に北朝鮮を交渉のテーブルにつけさせることが大切だと主張しました。
専門家の話で興味深かったのは、北朝鮮の軍事的能力というのは侮れない、という点でした。同国を3回ほど訪問しているある専門家は、北朝鮮は約1400の地下施設をもっており、その実態が何であるかは米国政府も把握しきっていないという問題を指摘しました。また、北朝鮮が破滅的な戦争を韓国や日本にしかける可能性は低いとしながらも、「そうすることが、金正日体制の生き残りの唯一の選択肢」というように判断された場合には、200発あると指摘されているミサイルに核兵器(核弾頭は4?8発程度あると見られている)や生物化学兵器を搭載して発射する可能性があるとのことでした。
また、金正日自身、独裁者といっても自分の国内での権威維持のためには、「現金」収入が必要で、最近の国際的包囲網の中で違法な手法による現金収入が減っていることから、ミサイル技術の輸出や最悪の場合核の闇売買に手を染める可能性もあることが指摘されました。ただ、北朝鮮国内にも前向きな動きがあって、たとえば金正日が最近北朝鮮の子弟の海外留学を認めたという事実があります。海外の情報や考え方が北朝鮮国内で浸透していけば、中長期的には良い変化を促進することになるでしょう。
日本の拉致問題については、米国政府は引き続きその解決に全力をあげることを約束しました。いずれにせよ、米国と日本が様々なチャンネルで連携を緊密にし、まず北朝鮮の脅威の度合いを低下させ、不当な要求ははねつけるのは当然ですが国際社会で孤立しないように色々知恵を出していくことが重要だと再認識しました。
<日米地位協定問題:ホワイトハウスでの議論>
昨日の朝一番でホワイトハウスを訪れ、日本通でブッシュ政権の対アジア政策全般を統括する政府高官と会いました。約1時間、日本と周辺国をめぐる様々な問題について率直な意見交換をしましたが、「日米地位協定」改定問題については、日本の議員側と米側で激しい議論になりました。
私や民主党の議員が、沖縄での米軍ヘリ墜落事故や国会での審議などを念頭に、日本側では「日米地位協定の見直しについて日米交渉を開くべきである」という意見が強まっていることを伝え、それについての感想を求めました。米側は、墜落事故に対する怒りや国会での議論を尊重するとしながらも、原則的立場として日米地位協定改定の交渉は非常に難しいと主張しました。
ホワイトハウス高官が最も強調していた点は、「改定する場合には、日米地位協定は条約なので最終的に米国上院の批准(承認)がなければならない。ところが、上院議員の中には、少なからず米軍兵士の海外での諸権利を徹底擁護する立場の人間が多く、現時点で改定問題が議会で話題に上った場合の予測される事態は、改定を求める日本に対する猛反発である。これによって日米同盟の根幹がゆるがされる事態になりかねない」というものでした。そして基本的には外務省が示している「運用の改善」方針を支持しました。その他にも、米国の国内政治状況や海外における米軍再編問題との関連で改定問題に消極的にならざるをえない理由をいろいろ述べました。
私はそれらの理由ひとつひとつをそのまま額面どおり受け取りはしませんでしたが、他方でこの問題を「米国の視点からどう見るか」という姿勢が日本の政策決定者にも求められることを痛感しました。興味深いのは、この高官が「米国において、成功する2国間交渉の前提は、その交渉がwin-win(=双方にとって利益のある交渉)にならなければならないという点だ。あなたたちが言っている交渉は、win-lose(=どちらかが負ける交渉)であり、それでは前提が崩れる」と主張したことです。この点は、米政府側の交渉姿勢の根幹部分であり、今後日本としてどのような対応を取るか考える際に、配慮しなければならないポイントだと私は個人的に感じました。
われわれもこれらの意見を聞き、黙っていたわけではありません。私は、「米側の事情や考え方は理解できたが、一方で日本においても与野党を超えて、改定交渉へ踏み出すべきだとの政治的潮流が高まっていることを米側ももっと真剣に理解すべきだ。仮に政策論としてあなたが主張していることが正しかったとしても、政策論だけで政治が動かないことはあなたも十分承知しているだろう。日本側の提案を真剣に受け止めてほしい。」と強く申し上げました。
この後、国防総省(ペンタゴン)や国務省の高官とも会い、色々と議論しました。私の印象では、国防総省がかなり問題の深刻さを理解しているようでした。会見の後、国防総省の人間は、「今日のような議論を日米間でもっと頻繁にすべきだ」と言っていましたが、同感です。私は今後も機会をとらえて米国首都に足を運び、何度でもこの問題で議論しようと決意しました。
<公明党は「black box」?>
最後に、今回の訪米でもうひとつ個人的に決意したことがあります。
米国の首都において日本に関心の深い関係者に会っても、残念ながら公明党のことについて知っている人が非常に少なかったという事実があり、ある人の言葉では、「公明党は、日本政治のblack boxで、よくわからない」といわれてしまいました。これは個人的に大変ショックでした。公明党は日本の政治において、現在扇の要のような役割を果たしているわけですが、残念ながらそのことは米国首都においてごく一部の人を除いてよく理解されておりません。
今後の訪米では、積極的に自分で機会を作って公明党の歴史・政治理念・役割について、もっと知ってもらえる努力をしたいと思います。
最後の一日、がんばります。午前7時になりましたので、朝食を食べて準備します!