アーカイブ

月別タイトルリスト

デイリーメッセージ

« 前の記事 | デイリーメッセージメインへ | 次の記事 »

国会論戦:養子縁組あっせん問題

遠山清彦です。4月28日(月)の決算委員会質疑の第3テーマ、国際養子縁組あっせんと国内養子縁組あっせん問題についての国会論戦記録の配信です。このテーマは、国会議員の関心も薄く、私の知る限りでは、私以外の議員からは最近ほとんど取り上げられていませんが、重大な社会問題だと認識しています。

ちなみに、この問題についての良書がひとつあります。2006年6月発刊の高倉正樹著『赤ちゃんの値段』(講談社)という本です。著者の高倉氏は、現役の読売新聞記者ですが、この問題の調査報道の先駆者であり、私が3年前に参院厚生労働委員会で当時の尾辻大臣と長い質疑をした際にも様々な助言をいただいた人です。
(私の当時の質疑記録は、次のアドレスを参照してください)

http://www.toyamakiyohiko.com/record/archives/2005/03/post_70.html

この本を一読すると理解できますが、日本の現在の養子縁組制度には重大な欠陥が多くあります。例えば、国際養子縁組あっせんを産婦人科医や団体が行政に届出をせずに勝手にやっている実態があり、いわゆる「望まれない妊娠」で生まれた日本人の赤ちゃんが安易に外国人夫婦に養子としてもらわれており、その赤ちゃんが最悪の場合、海外で人身売買や臓器売買、児童ポルノなどの被害に遭う可能性が排除できないという問題があります。また、国内養子縁組については、海外の先進諸国では実親の下で養育されない要保護児童の社会的擁護策の一環として位置づけられ、里親制度とともに活用されているのにも関わらず、日本においては、養子縁組あっせんの法律的位置づけがあいまいなまま放置されており、なかなか成立しないため、家庭環境を知らずに成人する要保護児童が非常に多いという問題があります。

今回の質疑の中で指摘しているとおり、平成18年度には、日本の要保護児童は約4万人おりますが、そのうち里親の下で暮らしているのは3400名あまり、養子縁組が成立した件数も1300あまりであり、その他9割を超える大多数の子供たちは施設で養育されています。豪州では約9割、英国では約8割の要保護児童が里親委託され、家庭環境を享受していることを考えると、日本の現状はまことに恥ずべき状況です。子供の権利条約を持ち出すまでも無く、全ての子供がいかなる境遇であれ家庭環境を与えられるよう政府は努力しなければならないのに、これまで不十分でした。今回の私の質疑を契機に、政府が一層の取り組みをすることを望んでいます。


参議院決算委員会 2008年4月28日(月)(抜粋)

○遠山清彦君 
 今度は養子縁組あっせんの問題についてたくさん質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、大臣、お時間ないと思うので、私、二〇〇五年、三年前に、この養子、特に海外向けの養子縁組あっせんの問題につきまして包括的に取り上げさせていただきました。恐らく国会では初めて本格的に取り上げさせていただいたんですが、そのとき私が指摘した問題点、大臣、お時間なくて議事録読んでおられないと思いますので、三点まとめて申し上げます。
 一つ目は、私と当時の政府当局の質疑のやり取りで、毎年何人の日本人の赤ちゃんが外国に養子に出されているか正確に把握されていないことが判明しました。実は、今もそうなんです。間違いなく今も把握されていません。どれぐらいの誤差で把握されていないか分かりません。厚労省は数字持っているんです。しかし、その数字が信頼できるというふうに私は思ってないです。それは後で申し上げます。
 今日は法務省、外務省も呼んでいますが、法務省の入国管理局も、外国人の夫婦が、入るときには自分たちで来て、出るときに日本人のゼロ歳児を連れて出国する際に適正な養子縁組がなされたかどうかチェックされておりません。今もされておりません。今日はもうちょっと前向きな答弁いただけることになっていますが、これが一点目。
 二点目は、当時の読売新聞等の調査報道により、国内の、日本国内の養子あっせん事業者の中に法律で禁止されている営利目的の養子縁組あっせんをしているものがいる可能性が指摘されたと。また、海外養子の、海外に出された日本人の赤ちゃんの追跡調査も全くされていないので、日本人の赤ちゃんで海外で人身売買被害に遭った者がいる可能性が排除できない実態が明らかになりました。これは二点目です。
 三点目は、この背景には国内法制度の不備があります。その要因の一つが、後で外務省に聞きますけれども、一九九三年のハーグ条約、ハーグ条約という名前の条約はいっぱいあるんですが、正式名称は国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約を日本政府が署名もしてない、批准もしてないという問題がございます。
 この問題意識の下に三年前に尾辻当時厚労大臣にいろいろお願いをして前向きな御答弁を伺ったんですが、まず事務方に聞きますけれども、私の質疑以後、もう三年たっていますが、国内の、日本国内の国際養子縁組をあっせんしている事業者の実態について、正確な調査をして結果を公表されたかどうか、これお答えください。

○政府参考人(村木厚子君) 先生からの御指摘を受け、養子縁組の実態について毎年調査を行っているところでございます。ちなみに、平成十八年度におきましては、第二種社会福祉事業の届出を行っている養子縁組あっせん事業者数は、全国で十一事業者、それによって国内にいる子供を国外の養子にあっせんした件数は全国で二十二件ということでございます。

○遠山清彦君 今、数字の話が大臣出てきましたけれども、三年前の私の質問ではどういうことを聞いたかというと、日本から一九九五年の一年間に海外に出た養子の数は何人ですかと当時厚労省に聞いたんです。大体今の数字と似たような数字が当時出てきた。ところが、これ今私手元に持っていますが、アメリカの国務省が各国別に一年間にどの国からアメリカに養子が来たかと書いてあるんですね。一九九五年のところを見たら、私びっくりしたんです。アメリカの国務省のオフィシャルのレポート、インターネットに公開している情報で六十名となっている。日本の厚労省が把握している数が、アメリカ以外の国も含めて二十数名だったんです。アメリカだけでもう既にギャップが四十名近いでしょう。だから、絶対正確じゃないよと。それはなぜかというと、これは厚労省の責任だと言っているんじゃないんです。要するに、子供をあっせんして海外に養子に出しているということを届けないでやっている無届け事業者がいっぱいあるんです。まあ、いっぱいといっても十幾つ、全国で確認されているのは。
 大臣、先ほど、命に値段付けられないというお話ししましたけれども、手元に「赤ちゃんの値段」という本があります。これは今度お届けしますけれども、これを読んでいただければ、これは読売新聞の高倉さんという記者の方が何年間か掛けて調査報道をやって書かれました。この中には、そういう無届けの業者がやっていると。
 それから、私の心配は、国際養子縁組と聞こえはいいですけれども、日本人の赤ちゃんが海外へ出されて、児童ポルノとか人身売買とか、場合によっては臓器売買ですね、臓器を取り出すためだけの目的で子供を海外に養子に出すということが海外では残念ながら事例があるんです。だから、そういう被害に日本のチェックが甘かったら日本人の赤ちゃんがなっていますよということなんですね。
 それで、次の質問、厚労省、またしますけれども、私は三年前に、こういう海外への赤ちゃんのあっせん事業をしている者を今の都道府県への届出制ではなくて認可制にすることを検討すべきじゃないかと、また、悪質なあっせん業者がいたら摘発をしたり刑事告発するべきじゃないかということを申し上げましたが、この進展状況を教えてください。

○政府参考人(村木厚子君) この養子縁組のあっせん事業者につきましては、現在、都道府県知事に届出が義務付けられております。無届けで事業を行っている事業者につきましては、把握をし次第自治体に調査をお願いをするということをしているところでございます。また、無届けの事業者を見付け次第自治体において届出を促すほか、社会福祉法におきまして、不当に利益を図った事業者や無届けの事業者に対しては、都道府県知事の業務停止命令、これに反した場合の罰則、それから児童福祉法におきましても、営利目的の養育あっせん行為を禁止する規定があり、罰則を定めているところでございます。これらの規定に基づきまして、都道府県において事業者の指導をお願いをしているところでございます。
 先ほど、先生から届出とするか認可とするかということで、認可とすべきでないかという御指摘をさきにもいただいたところでございますが、これは社会福祉事業全般につきまして、事業の継続性、安定性を確保し、事業の適正な運営を確保するために規制をする必要性と、一方でまた、その事業の展開について自主性や創意工夫を可能とする必要性を総合的にバランスを見て決めているということを御理解を是非いただきたいと思っております。
 いずれにしましても、大変児童の福祉に直接にかかわる問題でございますので、児童の利益が不当に侵害されることがないように、都道府県とも協力をして指導を徹底していきたいと考えているところでございます。

○遠山清彦君 審議官、一つだけ答えてください。
 私が質問した後に、どこかそういう養子あっせんをしている事業者が、何か法に基づかない、先ほど申し上げましたように、赤ちゃんあっせんしてお金取ったらこれは法律違反なんです。営利目的の養子あっせんはできないんです。でも、それをやっているらしい団体のことはいろんな報道で明らかになっています。
 それから、もう一つ問題は、この本にも詳しく出てきますけれども、女性セブンとかの週刊誌で横浜で取り上げられた医者がいるんです。この人はもう自分で堂々と実名で新聞記者の質問に答えて、産婦人科のクリニックやっている、自分はこの二十年間ぐらいの間に五十人の赤ちゃんを、いろんな、まあ望まれない妊娠で産んだ人からもらって、それを、養子を欲しいという親にどんどんあげていたと。これは女性セブンにも出ているしこの本にも出ているんです。一度も横浜市、政令指定都市がこれ義務あるんです、横浜市から一本も電話掛かってこない。逆に、子供が欲しい全国の親から電話が来たり、それから赤ちゃんを産んですぐだれかに差し出したい匿名の人から電話が来たりと。だけど、行政から一本も電話来てないと書いてある。
 厚労省は把握していますか、都道府県が何かそういう摘発したりとか調査へ入ったというのを。

○政府参考人(村木厚子君) この関係事業者に対する適正な指導を都道府県にお願いをし……

○遠山清彦君 原則論はいいです、実際を聞いているんです。

○政府参考人(村木厚子君) また、ガイドラインもお示しをしているところでございます。
 都道府県においてこれらの指導、直接に摘発をしたかどうかということについて、私どもで具体的な件数を把握しておりません。

○遠山清彦君 じゃ、調査してください。私が質問通告した後に調査すべきでしょう、それは、通告しているんだから。恐らく、多分ないんですよ、ないんです。それは、都道府県の側もそういう意識がないんです、大臣ね。
 次に、外務省、来ておりますね、伺いますが、先ほど私が申し上げた一九九三年のハーグ条約の批准に向けての国内法整備へ向けた検討状況及び今後の見通しについてお答えください。

○政府参考人(猪俣弘司君) 御指摘の条約は、先ほど先生の方から話がございました国際養子縁組に関します国際的な協力体制を確立することを目的としております。現在まで七十五か国が締約国になっておりますし、昨年にはアメリカが批准するということでございます。
 この条約を締結するためには、委員も御承知のとおり、国内法の整備あるいは中央当局の指定などにつきまして更なる検討を行う必要があります。現時点では国内法整備等のめどは立っておりませんけれども、国際的な養子縁組に関しまして、当事者である子の基本的権利を尊重し、その最善の利益を確保することの意義も考えまして、外務省としましても、関係省庁と連絡を取りつつ、引き続き検討を進めていきたいと考えております。

○遠山清彦君 これは外務省だけではできないんですね。大臣、後で感想を伺いますけれども、厚生労働省と法務省と外務省、恐らく三年前に私が尾辻大臣に相当強く申し上げたので、その直後には何度か協議が行われたと思います。ただ、その後私も取り上げなかった、関心が元々薄いということもあって、また棚上げになったんですね。
 これは後ほど申し上げますが、国内法整備も必要なんです。場合によってはもう議員立法でもやって、やらなきゃいけないと今、私、準備をしているところでありますけれども、ただ一方で、真剣に外務省、厚労省、法務省でこの協議をして条約を批准すると。
 アメリカが去年批准して今年から施行とありまして、これは大きいんですね。アメリカ合衆国というのは、先ほどちょっと指摘した国務省のデータベース見ると、数千人規模で、例えば去年一年間の例でいうと、中国本土から五千四百五十三名、グアテマラから四千七百名、ロシアから二千三百名、これ上位三か国ですけれども、養子が来ております。この条約にアメリカが入ると、条約に基づいた基準と手続で養子をモニターし始めますので、養子輸出国であるこういう国々もまたいろんな波紋が起こると思いますが。
 次に、法務省、伺いたいと思います。
 三年前に私が質疑を、質問をした際の御答弁では、外国人の夫婦が日本人の子供を海外に連れ出すときに、その子供がゼロ歳児であっても、有効なパスポートとビザを所持している限り簡単にできますよと、つまりノーチェックで出していますと。
 私は、再度今日お聞きしますが、人身売買防止という観点に立てば、これはもう国際社会で取り組もうということになっているわけです、立てば、その子供と同伴者の関係ぐらい、出国時にちょっとおかしい点があれば、その子は何なんですかということぐらい聞く、チェックをする。私、すべての外国人夫婦に聞けと言っているわけではないんです。ただ、明らかに、アメリカでもロシアでも何人でもいいんですけれども、夫婦二人だけで入ってくる、あるいは別々で入ってくる、帰りにぱっと見たら、日本人の赤ちゃん抱えていると。それを、赤ちゃんのパスポートなんていうのは簡単に手に入りますね、これあっせん事業者が用意しますから、パスポートは。だから、ああ、パスポートですねと。で、子供の家族関係まで立ち入れないといって、そのままノーチェックで出しちゃうんです。
 だから、最後のチェックポイントは法務省の入管なんですね。この点、どうですか。

○政府参考人(二階尚人君) 法務省といたしましても、出国の確認時に違法な行為を行っている者を発見し、所要の対応を取ることは重要であると考えております。
 委員の御指摘のように、日本人の乳幼児の出国の際に、その乳幼児を同伴している大人との関係が不自然と考えられる場合にはその関係を尋ねるなどして違法な行為の発見に努めたいと考えております。そして、そのために近日中に全国の地方入国管理局に対し、委員御指摘のような背景を含め通知するとともに、職員向けの研修の場等を通じて周知を図ってまいりたいと考えております。

○遠山清彦君 三年前に比べると大分前向きの御答弁でありがとうございます。
 法改正とか、これは要らないんです。要するに、出入国管理をやっている現場の担当官が直感、彼らは直感でやっているところもありますから、入管職員がこれはちょっとおかしいと思ったときに、本当に養子ですかと、養子の証明の書類ありますかというぐらい聞くだけで効果が違うと思いますので、是非お願いをしたいと思います。
 舛添大臣、いろいろ既に申し上げておりますけれども、この国際養子縁組のあっせん、これが不十分にモニターされているということも含めて私は大臣の是非リーダーシップをいただきたいと思っていますが、一言所感をいただければと思います。

○国務大臣(舛添要一君) ハーグ条約にしても国内法制の整備が必要ですから、これは法務省、外務省と協議してどういう形で法的な枠組みを整備できるか。先ほど委員がおっしゃったように、場合によっては議員立法ということもあり得ると思いますけれども、こういう形で、先ほどアメリカの国務省の数字とこちらの数字が違うというのは、アメリカの数字が正しいとすれば抜けている部分があるわけですから、対応してみたいと思っています。

○遠山清彦君 次に、国内養子縁組あっせんの問題についてお聞きをします。
 まず厚労省に、いわゆる要保護児童、十八歳未満の未婚、未成年の母親が出産直後に育児を放棄したり、あるいは親の虐待等で引き離されたりした児童のことを要保護児童というわけですが、平成十八年度のその児童の総数及び施設で養育されている子供の数と里親委託されている者の数と、それぞれお示しをいただきたいと思います。

○政府参考人(村木厚子君) 平成十八年十月一日現在の数字について申し上げます。
 要保護児童の総数、四万飛び二百九十八名でございます。このうち施設に入所している子供は三万六千八百七十四人、里親に委託されている子供は三千四百二十四人でございます。

○遠山清彦君 大臣、要保護児童数四万人、施設養護、施設にいる子供たちが三万六千八百七十四人、里親委託が三千四百二十四人と。
 私、法務省関係から、家裁の方からデータをもらって、養子縁組で成立した平成十八年の件数は、特別養子、普通養子合わせて千三百十八名になっております。これ何が分かるかというと、日本では要保護児童といういろんな事情で家庭で育てられない子供が四万人もまだいるんですね。ところが、そのうち今の数字ですと九一・五%が施設で暮らしていると。家庭環境、つまり里親のところで暮らしている子供さんというのは八・四%にすぎない。養子縁組は更にその半分しかいないということで、非常に施設偏重主義であります。これは、子どもの権利条約の規定に照らしても、本来はすべてのそういう要保護児童が家庭環境で育てられるべきだというふうに国際社会一致しているわけで、九割以上の子供が施設にいるという日本の状況は極めて問題でございます。
 実は、厚生労働省も大臣もこれはよく分かっていて、今国会に出された児童福祉法改正案で里親制度の拡充を図るための措置をいろいろと打ち出しております。私、それは一般的に評価しているんですが、一点だけ納得できないところがあります。それは、要保護児童を比較的短期間預かる養育里親への手当は倍増することになっていますが、その要保護児童との養子縁組を前提として預かる養子縁組里親という方々もいるんですね、この方々への必要経費は出しますけれども、手当を今まで月三万四千円だったのをゼロにすると。私はこれはちょっと理解できないと思っているんです。
 つまり、日本の里親制度を拡充しようというのはいいんですけれども、それが養子縁組を前提としている里親への支援を打ち切る理由には到底ならないと思うんですが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) これは、最終的に養子として迎えるわけですから、そういう意味で生活費とか必要な支援はしております。だけれども、手当としてその親に払う、しかしこっち側は養子じゃなくて、まさに制度として里親として仕事してあげましょうというのとはちょっとやっぱり違うだろうと。むしろ、要するに養育のため、養子として取るのを前提としないで、養育のためだけ制度として一生懸命里親としてやってくださっている方々の手当をその分引き上げたんですね。
 私は、だから、そっちをほったらかしてこちらを減らすのなら問題があるかもしれませんですけれども、やっぱり最終的に養子として迎える立場と、そうじゃなくて里親として働いてくれる方はちょっと差を付けた方がいいかなという感じがして、その減らした分をむしろ、確か三万四千円を七万二千円に加算したわけですね。だから、ちょっとこれは、一般的な感覚からしても、そういうところが常識的な判断の落としどころかなというような気はしています。

○遠山清彦君 大臣のおっしゃっていることも、私も担当の厚労省の官僚の方とお話をして、全く理解していないわけじゃないんです。
 ただ、要は実情は、養子縁組を前提じゃない養育里親の中には、途中で養子縁組やっぱりその子としたいと思う方もいるし、恐らく逆もあるんですね。養子縁組を前提に預かったんだけれども、やっぱり自分たちは無理だと、で、養育里親という役割で終わろうという方々も恐らくいるんじゃないかと。そうすると、途中で養育目的から養子縁組にしたい方とかいうことというのはあり得ると、理論上はですね。それから、実態上もあるというふうに聞いています。それからもう一つは、養育里親なら手当七万二千円だけれども、養子縁組を前提にしたら手当はゼロですよというと、何か私が受ける印象は、もう子供の社会的養護政策としては、養子縁組というのは、ちょっともう横に、わきに置いて、まずは里親、短期間預かる里親だけを拡充しようとしているように思えるんですね。
 何が問題かというと、この施設へ預けられている子供たちというのは、大きく分ければ二種類の子供たちなんです。一種類目の子供というのは、児童虐待等の問題のために一時的に預けられている。だから、いずれは実親のところに戻る可能性もある子供たちですね。これは養育里親でも私いいと思うんです。ただ、親が完全にもう子供を養育するという責任とか義務を放棄しちゃっている子供たちがいると。その子供たちは、私は、早いうちに養子縁組に持っていかないと、この子は家庭を知らずに育つんです。
 大臣、私、沖縄で、今からもう三年前ですけれども、児童養護施設へ行きました。そこですごく悲しい男の子に会いましたよ。その子、当時十八歳。生まれてからすぐ手放されて、十八歳までずっと施設です。家庭を知らずにもう成人したと思います。何でですかと私、施設の人に聞いたら、何度か養子縁組の話があったけれども、実親が、自分は育てないけれども、親子の縁は切りたくないと実の母親が言ったもんだから、それが最大の法律上の障害になって、彼はもらわれなかった。養育里親も見付からず、十八年間、一日も家庭を知らずに大人になっちゃったんです。この子高校三年生でした。私は会って涙が出ましたよ。だから、どこか制度に不備があると思っているんです。
 是非、これ大臣、今回の法改正ということもありますが、この養子縁組を軽視しちゃいけないと、養子縁組が社会的養護の政策として適切な子供たちもいるんだという認識に立った制度の見直しをちょっと考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(舛添要一君) 一つのやり方は、養子縁組を前提とした里親制度とそうじゃないのの区別を最初からなくしちゃうのも一つかもしれないですね、場合によっては。
 ただ、じゃ、ある段階で、今日から私の養子に決まりましたといったら、そこでやっぱり手当を打ち切るのか、それともそれでも続けるのか。そうすると、先ほどおっしゃったように、手当をもらうためにぎりぎりまで養子縁組しないということもあり得ると思いますね。かといって、逆に、養子縁組を前提としない里親制度を増やさなければ、先ほどの今沖縄の例のように、絶対実の親が嫌だと言ったときに、そっちの制度がなければ永遠に家庭の味というのは味わわないで成長しちゃうので、ちょっとこれはいろんな観点から実例に基づいて検証する必要があると思いますので、そういう様々な観点から検証してやはり子供に家庭の体験というのをきちんとやらせる、そういうことを試みたいと思います。

○遠山清彦君 大臣の最後の一言、大変心強いです。
 それで、実は大臣、厚生労働省も平成十四年九月五日付けで出した通知があるんですね。これ、タイトルは「養子制度等の運用について」という通知なんですけれども、この通知には明確にこう書いてあるんです。「児童相談所長は、」、児相の所長ですね、「要保護児童対策の一環として、保護に欠ける児童が適当な養親を見い出し、適正な養子縁組を結べるよう努めること。」と明示されているんです、努力規定ではあるんですけれども。
 ちょっとここで村木さん、聞きますけれども、この通知の後に児童相談所があっせんを主導して成立した養子縁組というのはどの程度あるのか、実数を示してください。

○政府参考人(村木厚子君) 平成十四年度から十八年度までの数字でございますが、養子縁組をされたことによって里親委託を解除した子供の総数は千二百十六名でございます。

○遠山清彦君 まだ少ないといえば少ないんですが、ただ、全体の養子縁組の数自体が年間千二百とか千三百ぐらいが日本ですから、そのうち二百ぐらいは児童相談所の所長がかかわってやっているということで、ここを私は広げていくということも、養育里親の制度を拡充すると同時に、大臣、考えていただきたいんですね。
 私の最後の質問になりますけれども、私は、養子縁組のみならず、里親委託も日本は先ほど申し上げたように一〇%以下と成果は芳しくない。オーストラリアでは要保護児童の九割が、そしてイギリスでは八割が里親委託されているわけです。
 この原因を考えたときに、一点目はまず制度自体の周知徹底が非常に弱いと。大臣も海外経験があるから御存じだと思いますが、私もイギリス六年住んでいて、イギリスは道を歩いているだけでもフォスターペアレントという、里親募集というような、それをまた促進している団体の宣伝とかをよく看板等で見かけます。日本は、正直言いますよ、犬とか猫の里親募集の張り紙とか看板はよく見るけれども、人間の子供の里親募集の話は全然見ないんですよ。これは制度の周知徹底が弱い。これが一点目の問題だと思います。
 二点目の問題は、児童相談所の職員の絶対数が私は足りないと思っております。今児童虐待への対応等で非常に多忙を極めている。そんな中で、非常にややこしい複雑な養子縁組とかそういった問題にかかわり合えない職員が増えていると思いますので、ここは予算措置も含めてしっかりやらなきゃいけない。
 最後に、日本では重大な法制上の欠陥があると思っています。それは、身分法上の養子縁組の要件を定めた養子法は民法の中にあるんですが、養子あっせんの要件を決めた法律はないんです。ほかの国ではこれはあるんですね。別法で立てられているわけですが、最後の点については、先ほど申し上げたとおり、私自ら議員立法をやって、最後はこれ党派を超えて賛成をしていただいて、日本人の赤ちゃんが幸せな家庭に行けるような体制を整えたいと思っていますが。
 大臣、最後に、この二点目の児相の拡充、それから周知徹底についての決意をお聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 増員への努力は続けておりますけれども、いかんせん、とにかく全体の予算の制約の中でどこにどういうふうにめり張りを付けるかというのは非常に大きな問題。引き続き、人員の確保には努めていきたいと思います。
 それからもう一つ、昔の日本は養子縁組というのは普通だったですね。それで、血縁のない子供とかいうのは幾らでもいたわけで、大体姓が何回も変わっていますよ。それ、養子縁組してきた。だけれども、特に戦後になって、ある意味でアメリカ的なファミリー意識が強くなってきて、ところが、現に今アメリカというのはもっと簡単に養子を受け入れる。だから、血縁によらないファミリーというのはあるんですよということをもう少し社会全体が受け入れるということじゃないと、今のお話だと、養子に対する要件の法律を作って、児童相談所を拡充してどうすればと言うけど、やっぱり一般の意識で、ファミリーというのはいろんな形があるんですよと。私の友人のアメリカ人でも、それは白人ですけれども、黒人の子供がいたりアジア人の子供がいても、これ全部自分の子供だと。何の違和感もない。
 だから、私はそういう開かれた国に日本がなるべきだと思いますので、そういう国民の意識の改革ということも実はこの裏にあるというふうに思います。

○遠山清彦君 終わっていますけど一言だけ。
 大臣、こういう言葉があるんです。戦前は家のための養子制度、戦後は夫婦のための養子制度と。私が今求めているのは、子供のための養子制度だということなので、よろしくお願いします。
 以上で終わります。

About

2008年5月 7日 10:14に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「国会論戦:障害者雇用・小児喘息問題」です。

次の投稿は「ネットカフェ難民支援」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

「遠山が語れば、政治がわかる。身近になる」
遠山清彦は、3つの無料メールマガジンを発信しています。ぜひご購読ください。

熱い思いを一通250文字にギュッと圧縮。あなたの元に届けます。

遠山スピリット」 携帯電話限定メルマガ

遠山清彦の政治理念、活動が良くわかる。powered by まぐまぐ!

遠山清彦の国会奮戦記(PC版)」 パソコン向けメルマガ

携帯電話でもしっかり読みたい。powered by ミニまぐ!

遠山清彦の国会奮戦記(携帯版)」 パケット定額向けメルマガ